高度プロフェッショナル(高プロ)制度とは 働き方改革により新設
平成30年の働き方改革関連法による労基法改正において新たに設けられた制度で、高度の専門的知識を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提として、労働者の健康を確保するため年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労基法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しないとする制度です。
労働者にとっては働く時間帯の選択や時間配分について自身の裁量で決定でき、また使用者にとっては割増賃金の抑制というメリットがある反面、労働者にとっては長時間労働により健康を害するリスクや使用者にとっては労働者に健康問題が生じた場合には労働者の生命、身体等の安全を確保するように配慮するという安全配慮義務違反が問われるリスクがあり、厳格かつ適正な運用が求められる制度です。
高度プロフェッショナル制度の導入の流れ
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労使委員会の設置:労使委員会は法令等に規定された要件に適合するものでなければならない。
①委員の半数については、事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に任期を定めて指名されており、管理監督者の地位にある者以外の者であり、また、使用者の意向に基づく者であってはならない。
②委員会の議事について、議事録が作成・保存されるとともに労働者に対する周知が図られていること。
③委員会の招集、定足数、議事その他の労使委員会の運営について必要な事項に関する規定(運営規程)が定められていること。
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労使委員会で決議:労使委員会において委員の五分の四以上の多数による議決により、法令で定められた事項(後述)について決議することが必要。
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決議を所轄労働基準監督署長に届出:所定の様式(高度プロフェッショナル制度に関する決議届)によって労働基準監督署長に届出なければならない。届出が高プロの効力発生要件であることから届出なければ制度を導入することはできない。
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労働者の同意を書面で得る:高プロを労働者に適用するに当たっては、使用者は本人同意を得なければならない。この同意は書面に労働者の署名を受け、当該書面の交付を受ける方法によらなければならない。当該書面には①労基法で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用されないこととなる旨、②同意の対象となる期間、③同意の対象となる期間中に支払われると見込まれる賃金の額が明らかにされていなければならない。
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労働基準監督署への定期報告:決議の届出をした使用者は、当該決議が行われた日から起算して6か月以内ごとに、所定の様式(高度プロフェッショナル制度に関する報告)により、①労働者の健康管理時間の状況②労働者の休日の取得状況③選択的措置の実施状況④労働者の健康及び福祉を確保するための措置の実施状況について所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
労使委員会で決議を行ったが、決議の有効期間中に高プロの適用を受けた労働者が0人の場合であっても、決議の有効期間中であれば適用労働者の有無にかかわらず報告をする必要があると通達されている。
労使委員会の委員の五分の四以上の多数による決議が必要!
1. 高度プロフェッショナル制度の決議事項
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対象業務:高度の専門知識を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務であり、具体的には、①業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示を受けない業務であり、かつ、②次に掲げる5つの業務(後述)のいずれかに該当するものとすると労基法施行規則で定められている。
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対象労働者の範囲:事業場において高度プロフェッショナル制度の対象業務に従事し、①使用者との間の合意に基づき職務が明確に定められていること、②労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を1年間当たりの賃金の額に換算した額が、1075万円以上であることのいずれにも該当していなければならない。また、対象業務に常態として従事していることが必要で、対象業務以外の業務にも常態として従事している者は対象労働者とはならない。
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健康管理時間の把握:健康管理時間とは労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計の時間のことで、使用者は当該健康管理時間を把握する措置を実施しなければならない。健康管理時間を把握する方法は、タイムカードによる記録、パソコン等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法としなければならない。ただし、事業場外において労働した場合であって、やむを得ない理由があるときは、自己申告によることができる。
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休日の確保:対象労働者に対し、1年を通じ104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を与えなければならない。本人同意の対象となる期間が1年未満の場合は、年間104日以上の休日の付与に関しては、104日を按分した日数の休日を与えなければならない。
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選択的措置:対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置(選択的措置)を決議及び就業規則その他これに準ずるもので定め、実施しなければならない。
①労働者ごとに始業から24時間を経過するまでに11時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、午後10時から午前5時の間において労働させる回数を1か月について4回以内とすること
②1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1か月について100時間を超えない範囲内とすること又は3か月について240時間を超えない範囲内とすること
③1年に1回以上の継続した2週間の休日を与えること(労働者が請求した場合においては、1年に2回以上の継続した1週間の休日)
④1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間が1か月当たり80時間を超えた労働者又は申出があった労働者に臨時の健康診断を実施すること
(臨時健康診断の項目は、安衛法に基づく定期健康診断の項目であって脳・心臓疾患との関連が認められるもの及び当該労働者の勤務の状況、疲労の蓄積の状況その他心身の状況の確認)
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健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置:対象労働者の健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置であって、法令に掲げられた以下の措置のうちから決議で定め、実施しなければならない。
①上記選択的措置の①~④までのいづれかの措置であって、選択的措置として講ずることとした措置以外のもの
②健康管理時間が一定時間を超える対象労働者に対し、医師による面接指導(1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間が1か月当たり100時間を超えた労働者に対する面接指導を除く)
③勤務状況及びその健康状態に応じた代償休暇又は特別な休暇の付与。長時間にわたって労働したことに対する代償措置として、年次有給休暇、上記休日の確保、選択的措置の継続した休日とは別に付与することが必要で、代償休暇を付与したことを理由に賃金を減額することは認められないと通達されている
④対象労働者の心とからだの健康問題についての相談窓口の設置。これを設置していれば、実際に相談がなかったとしても措置を実施したことになると通達されている
⑤勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署への配置転換
⑥産業医等による助言若しくは指導又は対象労働者への保健指導。保健指導とは医師又は保健師により実施されるものであり、面談による個別指導、文書による指導等による方法がある。産業医等による助言若しくは指導とは産業医等が使用者又は衛生管理者等に対し、対象労働者の健康管理等について助言・指導を行うことと通達されている
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同意の撤回に関する手続き:対象労働者は同意の対象となる期間中に同意を撤回でき、使用者は同意の撤回を妨げてはならないため、同意の撤回に関する手続きに関して、撤回の申出先となる部署及び担当者、撤回の申出の方法等その具体的内容を明らかにする必要がある。申出先となる担当者とは個人名を特定する必要はなく、担当者を特定できる職名を決議することで足りる。使用者は本人同意を撤回した場合の配置及び処遇について同意の撤回を理由として不利益に取り扱ってはならない。同意の撤回を申出た労働者については、その時点から高度プロフェッショナル制度の法律上の効果は生じないと通達されている。
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苦情処理措置:対象労働者からの苦情の処理に関する措置について、苦情の申出先となる部署及び担当者、取り扱う苦情の範囲、処理の手順、方法等その具体的内容を明らかにする必要がある。申出先となる担当者とは個人名を特定する必要はなく、担当者を特定できる職名を決議することで足りる。
苦情処理措置について決議するに当たっては、使用者や人事担当者以外の者を申出先となる担当者とすること等の工夫により、対象労働者が苦情を申出やすい仕組みとすることが適当である。取り扱う苦情の範囲については、高度プロフェッショナル制度の実施に関する苦情のみならず、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度等高度プロフェッショナル制度に付随する事項に関する苦情も含むものとすることが適当である。事業場に既設置の苦情処理制度を利用することを決議した場合は、対象労働者にその旨を周知するとともに、その苦情処理制度が高度プロフェッショナル制度の運用の実態に応じて機能するよう配慮することが適当である。と通達されている。
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不利益取扱いの禁止:同意をしなかった対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。また、配置処遇についても同意をしなかったことを理由として不利益に取り扱ってはならないと通達されている。
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その他厚生労働省令で定める事項:上記の他決議において定めなければならない事項として厚生労働省令に列挙されている。
①決議の有効期間の定め及び当該決議は再度決議しない限り更新されない旨 ※有効期間について、1年とすることが望ましいとされている
②委員会の開催頻度及び開催時期 ※開催頻度及び開催時期については労働基準監督署長への定期報告の内容に関し労使委員会において調査審議し、必要に応じて決議を見直す観点から、少なくとも6か月に1回、当該報告を行う時期に開催することが必要とされている。また、決議を行った後に決議時点では予見し得なかった事情の変化に対応するため、、委員の半数以上から決議の変更等のための労使委員会の開催の申出があった場合は、上記有効期間の中途であっても決議の変更等のための調査審議を行うこととすることを決議において定めることが適当であるとされている。
③常時50人未満の労働者を使用する事業場である場合には、労働者の健康管理を行うのに必要な知識を有する医師を選任すること
④使用者は、○労働者の同意及びその撤回○職務の内容○支払われると見込まれる賃金の額○健康管理時間の状況○休日の確保の実施状況○選択的措置の実施状況○健康・福祉確保措置の実施状況○苦情処理措置の実施状況に関する対象労働者ごとの記録及び常時50人未満の労働者を使用する事業場における医師の選任に関する記録を上記有効期間中及び有効期間満了後5年間(当分の間は3年間)保存すること
高度プロフェッショナル制度は、専門性の高い人材がその知識や技術を活かし、柔軟かつ生産的に働ける環境を整えることを目的とした制度です。この制度の導入により、労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規制が解除され、従来の枠組みを超えた新たな働き方が可能になります。専門的なスキルを持つ人材にとって、自身の働き方やキャリアを活かした活躍の機会を見つめ直す良い機会となるでしょう。
高度プロフェッショナル制度の対象となる業務(対象業務)
法令に限定列挙された業務が対象!
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Point 01
対象業務に該当する要件は?
高度プロフェッショナル制度の対象とすることができる業務の要件は、①高度の専門的知識を必要とし、その性質上従事した時間と得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務として、施行規則で定められた業務であること、②当該業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示を受けて行うものでないことであり、どのような業務にでも適用できるものではありません。
<要件①の施行規則で定められた業務>
Ⓐ金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
ex)○資産運用会社における新興国企業の株式を中心とする富裕層向け商品(ファンド)の開発の業務
Ⓑ資産運用(指図含む。以下同じ。)の業務又は売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務
ex)○資産運用会社等における投資判断に基づく資産運用の業務(いわゆるファンドマネージャーの業務)
○資産運用会社等における投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務(いわゆるトレーダーの業務)
○証券会社等における投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務(いわゆるディーラーの業務)
Ⓒ有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務
ex)○特定の業界の中長期的な企業価値予測について調査分析を行い、その結果に基づき、推奨銘柄について投資判断に資するレポートを作成する業務
Ⓓ顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務
ex)○コンサルティング会社において行う顧客の海外事業展開に関する戦略企画の考案の業務
Ⓔ新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務
ex)○メーカーにおいて行う要素技術の研究の業務
○製薬企業において行う新薬の上市に向けた承認申請のための候補物質の探索や合成、絞り込みの業務
○既存の技術を組み合わせて応用することによって新たな価値を生み出す研究開発の業務
○特許等の取得につながり得る研究開発の業務
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Point 02
要件②の具体的な指示とは?
要件②の具体的な指示とは、対象労働者から対象業務に従事する時間に関する裁量を失わせるような指示をいい、これには、業務量に比して著しく短い期限の設定その他の実質的に当該業務に従事する時間に関する指示と認められるものも含まれます。
対象業務は働く時間帯の選択や時間配分について自らが決定できる広範な裁量が労働者に認められている業務でなければなりません。したがって、実質的に業務に従事する時間に関する指示と認められる指示も具体的指示に含まれます。
具体的例として、
○出勤時間の指定等始業・終業時間や深夜・休日労働等労働時間に関する業務命令や指示
○対象労働者の働く時間帯の選択や時間配分に関する裁量を失わせるような成果・業務量の要求や納期・期限の設定
○特定の日時を指定して会議に出席することを一方的に義務づけること
○作業工程、作業手順等の日々のスケジュールに関する指示
といったものが挙げられています。
ただし、高プロ制度が適用されている場合であっても、当該具体的指示に該当するもの以外については、使用者は、対象労働者に対し、必要な指示をすることは可能とされています。つまり、使用者が対象労働者に対し業務の開始時に当該業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することや、中途において経過の報告を受けつつこれらの基本的事項について所要の変更の指示をすることは可能とされているのです。
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Point 03
対象業務に関する留意事項
○対象業務について決議するに当たっては、決議に係る業務の具体的な範囲及び当該業務が左記Ⓐ~Ⓔの業務のいずれに該当するかを明らかにすることが必要であり、また、左記対象業務に該当する要件の全部又は一部に該当しない業務を労使委員会において対象業務として決議したとしても、当該業務に従事する労働者に関し、高プロ制度の効果は生じないとされています。
○対象業務は、事業場の部署が所掌する業務全体ではなく、対象となる労働者に従事させることとする業務のことです。したがって、対象業務の語句(例えば「研究」、「開発」)に対応する語句をその名称に含む部署(例えば「研究開発部」)において行われる業務の全てが対象業務に該当するものではないとされています。名称に左右されるものではなく、実態で判断するということです。
○対象業務に関連する情報・資料の収集、整理、加工等のように、対象業務を遂行する上で当然に付随する業務は、それらも含めて全体が対象業務となるものです。なお、対象労働者は、対象業務に常態として従事していることが必要であり、対象業務に加え、対象業務以外の業務に常態として従事している者は、対象労働者には該当しないとされています。
高度プロフェッショナル制度の対象労働者
職務と年収に関する要件に該当することが必要!
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Point 01
対象労働者に該当する要件は?
高度プロフェッショナル制度の対象となる対象労働者の要件は、
①使用者との間の合意に基づき職務が明確に定められていること
②労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を1年間当たりの賃金の額に換算した額が、1075万円以上であること
のいずれにも該当するものとされています。
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Point 02
使用者との間の合意に基づき職務が明確に定められていることの詳細
<使用者との合意>
使用者との合意は、その方法について法令で定められた方法でされなければなりません。その方法とは、使用者が、①業務の内容②責任の程度③職務において求められる成果その他の職務を遂行するに当たって求められる水準を明らかにした書面(職務記述書)に対象労働者の署名を受け、当該書面の交付を受ける方法とされています。対象労働者が希望した場合には、当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を受ける方法とすることができます。
なお、この「合意」は対象労働者の職務についての合意であり、高度プロフェッショナル制度を労働者に適用することについての本人の同意とは、別個のものであることに注意する必要があります。高度プロフェッショナル制度を労働者に適用するには、この「合意」と「同意」の双方が必要になります。
<職務が明確に定められていること>
職務が明確に定められているとは、当該対象労働者の業務の内容、責任の程度及び職務において求められる成果その他の職務を遂行するに当たって求められる水準が具体的に定められており、当該対象労働者の職務の内容とそれ以外の職務の内容との区別が客観的になされていることをいい、例えば、業務の内容が抽象的にしか定められておらず、使用者の一方的な指示により具体的な業務を追加することができるものは、職務が明確に定められているとはいえないとされています。さらに、職務の内容を変更する場合には再度合意を得ることが必要であり、その場合であっても職務の内容の変更は対象業務の範囲内に限られるものであると定められています。
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Point 03
使用者から支払われると見込まれる賃金の額の詳細
労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額には、個別の労働契約又は就業規則等において、名称の如何にかかわらず、あらかじめ具体的な額をもって支払われることが約束され、支払われることが確実に見込まれる賃金は全て含まれます。
したがって、労働者の勤務成績、成果等に応じて支払われる賞与や業績給等、その支給額があらかじめ確定されていないものは含まれません。ただし、賞与や業績給でもいわゆる最低保障額が定められ、その最低保障額については支払われることが確実に見込まれる場合には、その最低保障額は含まれます。また、一定の具体的な額をもって支払うことが約束されている手当ては含まれますが、支給額が減少し得る手当は含まれない。とされています。
また高プロの適用を受ける期間が1年未満の場合、高プロ制度が適用される期間に確実に支払われることが見込まれる賃金を1年間当たりの賃金の額に換算し、その額が1075万円以上となるか否かによって判断する。なお、換算の計算は按分により行う。例えば、適用期間が6か月で、確実に支払われる賃金が500万円である場合には、500万円×12÷6=1000万円となり、1075万円の要件を充たさない。との例示がされています。按分結果に1円未満の端数が生じた場合は、切捨てです。
さらに、高プロ制度の対象とするに当たって、賃金の額が対象となる前の賃金の額から減ることにならないようにすることと定められていますが、対象となる前の賃金の額には、割増賃金も含めなければなりませんし、従前の賃金が割増賃金を含まずに1075万円を上回っている場合も同様であると規定されています。

高度プロフェッショナル制度が導入されることにより、企業と従業員双方に多くのメリットがもたらされることが期待されます。まず第一に、労働時間の規制が解除され働く時間帯の選択や時間配分について自らが決定できる広範な裁量が認められることで、専門性の高い職種の従業員は、自由な働き方を選択できるようになります。これにより、個々のライフスタイルや業務内容に合わせた最適な働き方を実現できることから、モチベーションの向上が見込まれます。
また、職務に応じた合理的な報酬体系が整備されることで、能力に見合った報酬を得ることが可能になり、それが従業員の生産性をさらに高める要因となります。従業員が自身のスキルや専門性を最大限に活かし、業務を遂行することができる環境が整った結果、企業全体の業績向上にも寄与するでしょう。
次に、この制度は従業員のワークライフバランスを改善するための助けとなります。フレキシブルな働き方が可能になることで、育児や介護など、私生活における必要に応じた時間配分が容易になります。これは特に、育児や介護を担う働き手にとって、大きなメリットと言えるでしょう。
さらに、専門性を持つ人材の流入が期待されるため、企業にとっては優秀な人材を確保しやすくなります。高度な専門性を活かせる職場環境を提供することで、企業の競争力を高め、長期的な成長につながるのです。
このように、高度プロフェッショナル制度の導入は、企業にとっては生産性や業績の向上、従業員にとってはモチベーションの維持やワークライフバランスの改善を実現する、大きなチャンスであると言えます。制度のメリットを理解し、従業員のキャリアプランや自社の成長に活かしていくことが重要です。
4. 注意すべきポイント
高度プロフェッショナル制度は、高度な専門性を求められる職種の労働者の労働環境を柔軟にし、働く時間に関する裁量を広げることを目的とした新しい仕組みですが、その導入にあたっては注意が必要です。
まず、制度を正しく理解することが不可欠です。この制度は、労働時間に対する規制が解除される一方で、高い水準の職務の専門性が労働者に求められることも忘れてはいけません。そのため、企業は制度導入に際して、対象労働者の業務の内容、責任の程度及び職務において求められる成果その他の職務を遂行するに当たって求められる水準を評価し、制度に適合する職務内容を事業場の実態や対象業務の性質等に応じて整理する必要があります。
また、制度を導入した場合、従業員の労働時間についての管理や勤務状況にも十分な配慮が求められます。労働時間規制が解除されることで、勤務状況が不透明になり、最悪の場合、過度な労働を強いる結果にもなりかねません。これを防ぐためには、定期的な健康管理時間の把握、休日の確保、選択的措置や健康・福祉確保措置の強化等が重要です。
具体的なリスクとしては、高プロ制度は自己の裁量が大きいことから自己責任を強調する形になりすぎることが挙げられます。専門性が求められる業務において、自己管理が難しい場合、従業員の長時間労働やそれに伴う健康問題を招く可能性があります。そのため、企業には制度導入時には必須とされる対象労働者の健康への配慮をしっかりと定着させ、従業員が安心して働ける環境づくりが求められます。
このように、高度プロフェッショナル制度は、個々の事情に応じた柔軟な働き方を可能にする一方で、制度を導入する際には前提として実施すべき課題も多く存在します。制度を単なる労働時間規制の緩和策として捉えず、従業員の労働条件改善の機会とし、従業員の多様な働き方への対応や業務の成果の向上を図るチャンスと捉えることが肝要です。制度の真の意義を理解し、正しく活用することで、企業はより強固な基盤を築くことができるでしょう。
5. 導入の検討・お問い合わせはこちら
高度プロフェッショナル制度の導入を検討している事業主様へ、この制度の導入状況についてご案内いたします。この制度は、専門性の高い働き方を促進するための新しい制度であり、従業員のキャリアを大きく変える可能性を秘めています。制度の概要や導入に必要な手続きやメリットについて理解した上で、対象業務や対象労働者の要件を充たすことが確認できており、導入を具体的に進める段階に来ているという企業の場合、適切に労使委員会を設置し高プロの適用に関して労使で十分に話し合い、適正な実施を図る観点からしっかりとした調査審議の上決議を行うことが必要です。
これまでに記載したとおり高度プロフェッショナル制度導入の手続きは非常に複雑であり、大変な労力を要するものです。また制度適用の要件も厳格に定められていることや年収規定が厳しいこともあり、制度を導入している事業場数や労働者数はあまり多くはない状況です。厚生労働省発表の「高度プロフェッショナル制度に関する報告の状況」(令和6年3月末時点)を見ても、決議事業場数:30事業場、対象労働者数:1340人と制度創設から5年を経てもその数において大きな伸びは見られないという印象です。さらに高プロの決議届を提出した事業場には労基署の調査が入りやすいとの指摘を耳にすることもあり、ハードルはかなり高いと言えます。
上記のような状況にある高プロ制度ですが、導入を検討するにあたっての不安や疑問点があれば、ご相談ください。私たちが、専門的な知識を活かして丁寧にサポートいたします。具体的な相談を希望される場合は、こちらのお問い合わせフォームに必要事項をご入力いただき、ご連絡ください。貴社の働き方を変えるチャンスを、私たちと一緒に作っていきましょう。
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