使用者には労働者の生命・身体の安全や心身の健康が阻害されることがないように配慮する義務が課せられています。これを安全配慮義務と言い、労働契約に伴って信義則上当然に使用者が負うものとされていたことから、労働契約法の公布までは法律に規定されていませんでしたが、労働契約法はその第五条においてこの安全配慮義務を明確に規定しています。
第五条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
安全配慮義務の趣旨及び内容について、通達では次のように説明されています。
㈠ 趣旨
通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労働に従事するものであることから、判例において、労働契約の内容として具体的に定めずとも、労働契約に伴い信義則上当然に、使用者は、労働者を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っているものとされているが、これは、民法等の規定からは明らかになっていないところである。
このため、法第5条において、使用者は当然に安全配慮義務を負うことを規定したものである。
㈠
内容
①
法第5条は、使用者は、労働契約に基づいてその本来の債務として賃金支払義務を負うほか、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に安全配慮義務を負うことを規定したものである。
②
法第5条の「労働契約に伴い」は、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に、使用者は安全配慮義務を負うことを明らかにしたものである。
③
法第5条の「生命、身体等の安全」には、心身の健康も含まれるものである。
④
法第5条の「必要な配慮」とは、一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではないが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められるものである。
なお、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)をはじめとする労働安全衛生関係法令においては、事業主の講ずべき具体的な措置が規定されているところであり、これらは当然に遵守されなければならないものである。
上記安全配慮義務の詳細を見ると、労働者の生命、身体等の安全や心身の健康を確保するためには、使用者はあらゆる場面を想定し、多くの対策を講じなければならないものと考えられます。