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賃金の支払

賃金の支払方法についての定め~賃金が完全かつ確実に労働者に渡るために~

労働基準法第二十四条

  • # 01

    労働基準法第二十四条第一項

    賃金は、通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならない。ただし、・・・

  • # 02

    労働基準法第二十四条第二項

    賃金は、毎月一回以上一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、・・・

労働基準法は第二十四条で、賃金の支払い方について5つの原則を定めています。これを「賃金支払いの五原則」といい、使用者はこの原則に則って賃金を支払わなければならず、違反した場合には、三十万円以下の罰金が課される可能性があります。  


賃金支払いの五原則とは?

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    通貨払いの原則通貨(強制力のある貨幣をいい、鋳造貨幣と銀行券)以外のものによる賃金の支払すなわち現物給与を禁止するものです。なお、現在では口座振込が一般化していますが、これについて、「口座払は労働者に若干の不便と協力行為を要するから、一般的には通貨払いの原則に反し許されないけれども、口座払の方法によることが労働者の自由な意思に基づき、労働者が指定する本人名義の口座に振り込まれ、振り込まれた賃金の全額が所定の賃金支払日に払い出しうる状況にあるときのみ許容されるが、労働者の同意がないときは労基法に違反する。」との判例を参考に口座振込を可能にする施行規則が制定されています。また同意については、労働者の意思に基づくものである限りその形式は問わないものであり、指定とは、労働者が賃金の振り込み対象として銀行その他の金融機関に対する当該労働者本人名義の預貯金口座を指定するとの意味であってこの指定が行われれば特段の事情のない限り同意が得られているものと解されるとの通達があり、同意を得ることがそれほど手間ではないことから、現在では口座振り込みが主流となっているものです。

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    直接払いの原則:労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁止するものです。労働者の親権者その他の法定代理人*1に支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、いずれも直接払いの原則に違反するもので、労働者が第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効である。と通達されています。

    *1:基準法第59条:未成年者は独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならない。との規定あり。

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    全額払いの原則:賃金の一部を控除して支払うことを禁止するものです。控除とは、履行期の到来している賃金債権についてその一部を差し引いて支払わないことをいい、例えば積立金、貯蓄金等の名目で賃金の一部の支払を留保する場合や貸付金、工場売店の売掛代金と相殺する場合等いずれも控除に当たります。判例においても「全額払いの原則は、労働者の賃金債権に対しては、使用者は、使用者が労働者に対して有する債権をもって相殺することは許されないとの趣旨を包含する」としており、賃金からの控除は原則として許されず、労働者の生活の糧である賃金が全額労働者の手に渡るように配慮されています。また、賃金が全額支払われないことによって、労働者が自由に退職できなくする状況(足止め)を防ぐことも意図するとも言われています。

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    毎月一回以上払いの原則:毎月一日から末日までの間に少なくとも一回は賃金を支払わなければならないとするものです。賃金の締切期間及び支払期限については、特段定めがありませんので、例えば締切期間について、二十五日締、つまり前月の二十六日から当月二十五日までを一期間として、月を跨いだ期間とすることは差し支えなく、また支払期限について、必ずしもある月の労働に対する賃金をその月中に支払うことも要しません。不当に長い期間でない限り、締切後ある程度の期間を経てから支払うとする定めにすることも可能です。


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    一定期日払いの原則:期日が特定されるとともに、周期的に到来するものでなければなりません。例えば、「毎月10日」のように支払日を暦日で指定する場合や、月給について「月の末日」、週給について「金曜日」等とすることは問題ありませんが、「毎月10日から15日までの間」のように日が特定されない定めをしたり、あるいは、「毎月第二金曜日」のようにカレンダーの巡りによって変動するような定めをすることは認められません。ただし、支払日が休日に当たる場合に、支払日を繰り上げまたは繰り下げる定めは一定期日払い違反とはなりません。

    一定期日払いの原則は、支給日が一定しないことによる労働者の計画的生活の困難を防止するための配慮です。

労働基準法第二十四条は賃金支払いの五原則を規定することで、賃金の支払方法についてのルールを定めています。この五原則によって、労働の対価が完全かつ確実に労働者本人の手に渡るように配慮され、全ての労働者が適正に賃金を受け取ることができるように、その権利が保護されているのです。この原則は、労働環境の整備や労働者の権利保護において非常に重要な役割を果たします。この原則に違反した使用者は、三十万円以下の罰金という罰則が用意されています。


賃金支払いの五原則の例外

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    通貨払いの原則通貨以外のもので支払うことができるのは、労働基準法第二十四条第一項によると、①法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合、②厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合です。

    ①に関しては、法令による別段の定めは現在ありませんので、対象となるのは労働協約に別段の定めがある場合のみで、例としては通勤手当としての通勤定期券の交付が考えられます。ただし、労働協約とは、労働組合法でいう労働協約(使用者と労働組合間)のみのことで、労使協定(使用者と労働者代表間)は含まれないと通達されていることと近年の労働組合の組織率から考えると、労働協約による別段の定めをしている例は多くはないと思われます。

    ②に関しては、労働基準法施行規則第七条の二において、労働者の同意を得た場合には、①労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する労働者の預金又は貯金への振込み(銀行口座への振込)、②労働者が指定する金融商品取引業者に対する労働者の預り金への払込み(証券総合口座への振込)、③指定資金移動業者(要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた者)のうち労働者が指定するものの第二種資金移動業に係る口座への資金移動(賃金のデジタル払い(後述))の方法によることができると規定されています。

    また、施行規則第七条の二は、退職手当の支払について、労働者の同意を得た場合には②の方法による他小切手、郵便為替の方法によることができるとしています。

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    直接払いの原則:上記で記載した通達において、それ以下に「ただし、使者に対して賃金を支払うことは差し支えない。」とあります。ここでいう「使者」とは、本人に代わって意思決定を行わない者つまり本人の手足となって動くにすぎない者であって、その支払が本人の自由な使用に委ねられたことになる場合には、直接払違反にはなりません。例えば、労働者が病気欠勤中に妻子が賃金の受領を求めるようなときは、本人の使者として直接払いの原則に反しないとされます。

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    全額払いの原則:賃金の一部を控除して支払うことが許されるのは、労働基準法第二十四条第一項において、①法令に別段の定めがある場合、又は②過半数労働組合または労働者の過半数代表者との書面による協定がある場合です。

    ①に関しては、所得税、住民税、労働・社会保険料、減給の制裁等が挙げられ、②に関しては、購買代金、社宅・寮その他の福利厚生施設の費用、社内預金、組合費、積立金等、事理明白なものについてのみ、労使協定によって賃金から控除することを認める趣旨であると通達されています。

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    毎月一回以上払いの原則・一定期日払いの原則:月一回以上払い及び一定期日払いの二原則について例外が認められるのは、労働基準法第二十四条第二項に規定されている、ただし、①臨時に支払われる賃金、②賞与③その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金です。つまり①②③については、毎月一回以上、一定期日に支払うことを要しないということです。

    ①に関して、「臨時に支払われる賃金」とは、「臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたもの、及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が不確定であり、且非常に稀に発生するもの」と、また、②に関して、「賞与」とは、「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものを言うこと。定期的に支給され、且その支給額が確定しているものは、名称の如何にかかわらず、これを賞与とはみなさないこと。」と通達されています。

    ③に関して、臨時に支払われる賃金及び賞与以外で毎月一回以上、一定期日を定めて支払うことを要しない賃金について、厚生労働省令で定める賃金として、施行規則第八条は具体的に次のように規定しています。

    施行規則第八条:法第二十四条第二項但書の規定による臨時に支払われる賃金、賞与に準ずるものは次に掲げるものとする。

    一 一箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当

    二 一箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当

    三 一箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当


上記のように、賃金支払の5原則にはそれぞれ例外が設けられています。原則に則った支払い方が、労働の対価が完全かつ確実に労働者本人の手に渡り、全ての労働者が適正に賃金を受け取ることができるように配慮された方法であったとしても、それ以外を認めないのでは、社会情勢や労働者の利便性を阻害することになりかねないことから、規制を緩やかにしているものです。

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雇用形態による影響

賃金のデジタル払いが可能に!

賃金は通貨での支払が原則ですが、例外として労働者が同意した場合、銀行口座等への賃金の振込によることが以前から認められてきました。

この賃金の支払方法の例外に、令和5年4月1日施行の労働基準法施行規則の改正によって、労働者が同意した場合には、資金移動業者の口座への資金移動による支払方法(いわゆる賃金のデジタル払い)が追加されました。

賃金のデジタル払いとは、キャッシュレス決済の普及や送金手段の多様化のニーズに対応するため、労働者が同意した場合には、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動を給与受取りに活用することを認める賃金の支払方法です。

使用者が賃金のデジタル払いを導入するには、①厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者とそのサービス内容の比較・検討をすることで利用する業者を選択し、②賃金のデジタル払いの導入に関しての労使協定を締結し、③賃金のデジタル払いを希望する労働者に対して必要事項(下記㋑~㋬の事項)を説明した上で労働者から個別の同意を得ることが必要です。なお労働者への説明の際には、賃金の支払方法に関する従来の方法を選択することができることを説明しなければなりませんし、また、デジタル払いを希望しない労働者にデジタル払いを強制してはなりません

なお、①に関して、資金移動業者が厚生労働大臣の指定を受けるための要件は次のとおりです。

㋑口座残高上限額を100万円以下に設定又は100万円を超えた場合でも速やかに100万円以下にするための措置を講じていること

㋺破産等により資金移動業者の債務の履行が困難となったときに、労働者に対して負担する債務を速やかに労働者に保証する仕組みを有していること

㋩労働者に対して負担する債務について、当該労働者の意に反する不正な為替取引その他の当該労働者の責めに帰すことができない理由により当該労働者に損失が生じたときに、当該損失を補償する仕組みを有していること

㋥最後に口座残高が変動した日から少なくとも10年は口座残高が有効であること

㋭口座への資金移動が一円単位でできるための措置を講じていること

㋬現金自動支払機(ATM)を利用する方法その他の通貨による受取ができる方法により口座への資金移動に係る額(1円単位)の受取りができ、かつ、少なくとも毎月1回は当該方法に係る手数料その他の費用を負担することなく受取りができること

㋣賃金の支払に関する業務の実施状況及び財務状況を適時に厚生労働大臣に報告できる体制を有すること

㋠㋑から㋣のほか、賃金の支払に関する業務を適正かつ確実に行うことができる技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること

以上のように、資金移動業者が厚生労働大臣の指定を受ける要件は厳格に定められています。公表資料によると、令和7年4月4日現在において、指定を受けた資金移動業者数はわずか4社であり、ハードルの高さが窺えます。

なお、㋑~㋬の事項は、資金移動業者が厚生労働大臣の指定を受ける要件であると同時にデジタル払いを希望する労働者の同意を得るに当たって労働者に説明すべき事項とされていますので、賃金のデジタル払いにとって大変重視されている内容であり、労働者及び使用者にとって、利用する資金移動業者を選択する際の大切なポイントです。

給与の支払い方を再点検

労働基準法第二十四条、賃金の支払に関する規定は、賃金の支払方法の 5原則を規定している条文であり、極常識的なことを規定しているように思えます。しかし、日頃の運用の中での些細なことが原因で、その結果意図せず法令に反してしまっているということがあり得ます。


例えば、日頃の給与計算における時間数や賃金額の端数の扱い方の誤りによって、本来の支給額より少なく計算してしまう、つまり未払いが発生しているような場合には、全額払いの原則に抵触してしまっているケースが挙げられます。日常業務として定常的に行っているこのような業務は、何の疑問も抱かずに処理していることが多く、一旦立ち止まって考えてみると誤りであったということもあるものです。逆に結果オーライであることもあるでしょう。


日常の業務においては、長期に亘る慣習が意図しない盲点を作り出してしまっている場合があるものです。賃金の支払に関しては、まずその原則を理解した上で、自社の賃金制度がこれらの原則に則っているかを確認する必要があります。賃金支払についての透明性を保つことで、従業員のモチベーションを高め、企業の生産性を向上させることが可能です。さらに、専門家の助けを借りることで、賃金制度の適用や運用について点検し、問題点を発見、改善・対処することができます。

私たちアクサリス社会保険労務士事務所では、賃金制度の見直しや、賃金支払い五原則に基づく業務改善のサポートを行います。具体的には、賃金制度の構築や給与計算に関するアドバイスを行っており、安心して業務に専念できるよう、企業の状況に応じた最適なプランを提案します。

賃金制度に関するお悩みや、具体的なサポートについてのお問い合わせも随時承っています。初回の相談は無料で行っており、あなたのビジネスにとって最適な解決策を一緒に探し出すお手伝いをさせていただきます。詳しくは、弊所ホームページの問い合わせメールまたはお電話でお問い合わせください。

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